外科医が知らないステロイドの秘密

ステロイド力価換算表 医学

ありとあらゆる科で使われる万能薬ステロイド
副作用も多く、取っつきづらい印象が特に外科系の先生方にはあるのはないでしょうか?
それでも使わざるを得ないのでとりあえず慣習的に使ってる方が殆どかと思います。

そこでQ&A形式でステロイドの秘密についてエビデンスを探していきたいと思います

Q. 何でステロイドの点滴は1時間かけるの?
A. NSAIDs過敏喘息、いわゆるアスピリン喘息患者では急速静注でほぼ確実に強い喘息発作が誘発されるから

ステロイドで喘息が起きる、驚きですよね。もちろんステロイドで起きた喘息の治療薬はステロイドではありません。アドレナリンを使用しましょう。
ステロイドって喘息の治療薬ではなかったの?と思う方も多いと思います。
アスピリン喘息の場合、コハク酸エステルに過敏のためサクシゾン®、ソルコーテフ®、水溶性プレドニン®、ソルメドロール®などよく使うステロイド全てで発作が誘発されます。
リン酸エステルステロイドは安全と言われますが、国内製剤は基本的に亜硫酸塩やパラベンなどの添加物が混入されているため使用できません。
ただそのコハク酸エステルステロイドも1時間以上かける事で発作の誘発が非常に少なくなると言われており、そのために1時間の点滴を行うのです。また内服のステロイドはいわゆるプレドニンでは発作は起きないと言われています。

Q. 内服プレドニンって何で上限60㎎なの?
A. それ以上使っても効果がないから

ステロイド薬の標的分子であるグルココルチコイドレセプター(glucocorticoid receptor;GR)は核内受容体のひとつであり、ほぼすべての細胞に発現しています。リガンドにより活性化されたGRは標的遺伝子の転写を活性化したり、 抑制したりして多彩な薬理作用をもたらします。核内のGRを介した作用をgenomic effectと言います。プレドニゾロン換算で約1mg/kgでピークに達するとされており、そのために平均体重60㎏を参考にプレドニン5㎎を12錠、60㎎を処方する事が多いのです

Q. 内服は60㎎なのに点滴は60㎎以上使うのはなぜ?
A. non-genomic effectを期待しているから

前述のようにグルココルチコイドレセプターを介した反応には上限があります。しかし未解明の部分も多くありますが、non-genomic effectと言われ、細胞外で炎症性サイトカインなどに直接働く作用などが想定されているようです。このnon-genomic effectはプレドニン換算で250㎎が上限となるためヒドロコルチゾン1000㎎の点滴などいわゆるステロイドパルスで用いられる量となります。
なんとなく内服は60㎎、パルスは1000㎎、という形で使う事が多かったと思いますが、数字には根拠があるんですね。
ちなみにgenomic effectは効果発現までに数時間を要し、non-genomic effectは効果発現まで数分と言われています。そのため喘息発作や急性炎症の際に用いるステロイドはnon-genomic effectを期待して点滴で大量投与する訳ですね。

Q. ステロイドの力価忘れた
A. 下に資料を載せました

自分の疑問を解決したのですが、皆さんで知らない方も多かったのではないでしょうか?
内科医の先生には常識かもしれませんが、外科の先生、学生や研修医の皆さんのお役に立てれば幸いです。

参考文献の資料です

・グルココルチコイドによって調節される遺伝子

グルココルチコイドによって調節される遺伝子

・ステロイドの力価換算表

ステロイドの力価換算表

参考文献:
・国立病院機構相模原病院 臨床研究センター:https://sagamihara.hosp.go.jp/rinken/crc/nsaids/avoidance/index.html
・特集●ステロイドホルモンと脂質代謝─最近の進歩と臨床の新展開─:https://www.ryudai2nai.com/doc/Lipid201201_03.pdf
・福岡県薬剤師協会Q&A:https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/02.pdf

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