クリニカルクエスチョンを元に疑問を解決する過程と結果を記述するのが論文です
ただ、疑問を解決するだけではなく、広く知識を共有し社会的なメリットとするためには伝わる体裁が必要です
そのために指導医から貰った助言などを集めました
論文を書く際に基本的な内容からトップジャーナルに合わせた書式などをご紹介します
本文
はじめに
・明確で具体的なトピックまたはメインアイデアを論文にすることから始める。
・基本的には1論文1主題にする。
・論文の中で、その主旨を支える主な論拠やポイントを明確にする。
背景
・トピックの重要性と関連性を伝える。
手法・統計手法
・詳細に書きましょう
・介入因子、調整変数、アウトカムを確実に明示する
・感度分析の手法にも言及する(基本的に研究計画の一つなので)
結果
・近年のメジャージャーナルではp値の記載は不要で、むしろ信頼区間を求められます
・有効数字の桁数をできる限り揃える
・感度分析も結果の中に置く
ディスカッション
・結果以外から自分の意見を書かない(常識だと思っている事にも必ず引用文献をつける)
リミテーション
・一般的にはThis study has the following limitations. First, … Second, …というような形で箇条書きにする
結論
・簡潔にまとめましょう
・この研究の社会的影響、未来への洞察も書く
引用文献
・推論はもちろん、常識であってもすべてreferenceを明示する
・引用文献はPaperpileやEndnoteなどのツールを使わないとカオス
・引用文献のスタイルは様々ですが、メジャーなスタイルとしてNIH標準のものを以下にご紹介しています
Figure
・Figure legendの書き方は、FigureXのあとに図のタイトルを名詞句で書いて、その後は文章で説明を加えます
・一般的には現在形でまとめます
Table
・Legendは一般的にはタイトルのみの事が多いです
・Tableの中身は先頭が大文字、有効数字を統一する
忘れてはいけない記述
これらは以下のセクションは現在では要求される事が多い付属的情報です
ジャーナルにより必要事項、記載場所は異なるのでガイドラインを確認して忘れないようにしましょう
Acknowledgement
謝辞、著者未満の貢献に対する感謝を記載
Disclosure statement
COIを記載
Author contributions
それぞれの著者の論文での役割を記載
匿名査読の場合はここに名前を書いてしまうとダメなのでイニシャルに
Data statement
データの入手法を記載
全般
・インデント Indentation
一般的には最初の段落は字下げなし、2段落目から字下げあり、というものが多いようです
ただ雑誌によっては字下げなしを推奨している場合などもあり、author guidelineを精読しましょう
ガイドラインに記載がなければtabですべて字下げするのが無難、という方もいますが、全て字下げせずに編集者にお任せするスタイルもあるようです。いずれにしても統一感は大事です
・ケアレスミス
最後に必ず通読しよう(表示媒体を変える事がお勧め ex. iPad、紙)
媒体を変えることで頭がリセットされる、フォントや文字ズレなどが明らかになるなどのメリットがあります
・投稿規定
投稿規定はそれぞれのジャーナルのガイドラインを参照してください
ただし、Oxford academicのように構造的に分かりづらくなっていることもあります
各ジャーナルの投稿ガイドラインはとても簡素で、Oxford academyのホームページに詳細が書いてあり、また付録表については別でこちらのリンクに記載があります
ジャーナルのガイドラインが言葉足らずな印象であれば、ジャーナルの出版社のホームページも確認することをおすすめします
英語
・英語を書く際に節は冗長になるため、句を頻用する
投稿
・File upload
ジャーナルによって見慣れない投稿システムなどがあり、迷う方も多いのではないでしょうか
このタイプ
まずはselect fileでファイルを添付した後、ファイルのタイプを選びます
figureの場合はcaption/legend, link textというものが出ます
caption/legendは注釈、よくfigureの下についているものです
link textはそのfigureがどこに挿入されるか明示したものを記入します。例えばfigure1であれば本文中にあるfigure1に対してlinkするのでfigure1と記載します
出版社によって投稿形式は様々です
Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciencesでの詳しい書き方のポイントがこちらに日本語で紹介されているのでぜひ参考にしてください
http://www.jshbps.jp/uploads/files/en/JHBPS_Author_Guide_August_1_2019.pdf
査読者指定
ジャーナルによっては査読者を指定してください(義務)と言われます
査読者なんて知らないよ・・・
と思われる方は、参考文献の責任著者の方を選びましょう
同分野で知見がある方、かつ監修できる方であるはずです
メールアドレスを要求された場合は下のように論文の表紙、もしくは末尾の角に連絡先があるはずです
ちなみに投稿先のジャーナルに掲載歴があれば連絡先の記載は不要である場合も多いですので、その場合はその旨を理由に記しましょう
p値について
あくまで現実の課題において、あるAという物体や現象は関係しているのかどうか、そこが本質であるため、p値ではなく95%信頼区間などで示していく、というのが潮流です
医学統計の解説記事や、Natureやアメリカ統計学会の声明などが参考になるかと思います
(最近のJAMAやLancetなど、ビッグジャーナルではp値がない論文が増えてきている)
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2011/PA02949_04
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1903/26/news112.html
https://www.jaysong.net/asa_p_value_japanese/
論文を提出した
論文を提出したあとはacceptまたはrejectのメールを待ちます
待っている段階ではdecision in processとなっています
次はwith Editorになります
エディターチェックです
Editorチェックを超えるとすぐにレビューに回ります
Under Reviewの状態が終わるとDecision in Process、つまり決定段階になります
そしてRejectへ(号泣)
タグ: 論文作成