手術室で音楽をかけるのに対して皆さんはどう思いますか?
外科系の先生であれば自身はかけていますか?どんな音楽をかけますか?
僕が学生の時にアウェイクの手術でLOVEレボリューション21が流れていた時はいかがなものか、と思いましたが、整形外科の患者さんだったのでノリも良くこんなもんか、とも思いました
時は移ろい、エビデンスを調べることを覚えた私は手術室の音楽について結論が出ているのかを調べてみました
今回のテーマは手術室で音楽をかけて良いか?です
医療処置や手術は身体面だけでなく心理面にも作用を及ぼし、恐れや不安は処置自体にも影響を及ぼすことがある。 医療処置の前に不安が増大していると、抗不安剤の必要量が増え、それが転じて医療費や副作用の増加をまねくこと にもなりかねない。不安や苦悩は疼痛感受性を増大し、術後の不充分な疼痛管理は回復期の合併症を増加させること もある。音楽療法の支援的で柔軟なアプローチが患者の感情的な状態をポジティブにし、苦悩を軽減することで医療 処置そのものにも良い影響を及ぼす可能性がある。手術中や術後の疼痛の軽減、手術や医療処置の前の不安や苦悩 の軽減などのために、音楽の聴取を構造的に行うことにはエビデンス(根拠)がある。患者が覚醒していて、痛みを伴 う不安の大きい処置を受ける際には、音楽療法士が患者とより相互的にかかわる柔軟な音楽療法のアプローチの方が もっとよいかもしれない。生演奏(ライヴ)の相互的な音楽療法のアプローチによって、訓練された音楽療法士が音楽 や治療的プローチを患者の必要性に合わせて変化させるには、高度な臨床的技量を必要とする。音楽療法士、医師、 看護師、その他のメンバーのチームが総合的に共同することで、音楽の治療的使用が患者の入院に関わる全てのレベ ルで、最適な状態で提供されるのである。
「音楽医療研究」という雑誌に掲載された論文です
そもそも論として相当利益相反がありそうな感覚ですが、患者側に立ってみると静寂の中で心電図の音だけが響く空間よりも聞き親しんだ音楽が流れたほうがリラックスできるのは間違いないでしょう
それがアウトカムに影響するかと言われると全く分かりませんが、不安を取り除くことは患者満足度に繋がることは間違いありません
ここで重要なのは患者にとって快適な音楽であるべきということですね
では患者が起きていない状況ではどうか?エビデンスレベル大丈夫?
これに答えたシステマティックレビューがあります
El Boghdady, Michael, and Beatrice Marianne Ewalds-Kvist. 2020. “The Influence of Music on the Surgical Task Performance: A Systematic Review.” International Journal of Surgery 73 (January): 101–12
先ほどとは異なり、Impact factor 6の査読あり論文になります
PubMed / Medline、ScienceDirect、Google Scholarを使用して「music and operating theatre」「music and surgery」をキーワードに検索したものをエビデンスレベルごとに分類し分析しています
これもまたそもそも論として音楽と手術の関連を言いたがる人は良い傾向があると言いたいのではないの?という気もしますが、序論の段階で賛否がある事を明示しており、中立的なものになっていると推察します
結論としては音楽はかけたほうが良い
ということになります
細かい中身を見てみると
メリット
・小手術では10%前後の手術時間の短縮が得られた
・リラックスできる音楽は運動学習効果、計算能力を向上し精神的ストレスを改善する
・患者が起きている時に古典的音楽は鎮痛、鎮静作用を増強する(なんとミダゾラムを超える不安軽減作用があると)
・血圧の上昇を防ぐ(!!!)
・モーツァルトが良い!
・モーツァルトが良い!
・モーツァルトが良い!
デメリット
・看護師の聞き返しが増えた
・40dBを超えると術後感染症が増えるかもしれない
・ヘビーメタルやテクノサウンドは不整脈に繋がる危険性
中立
・腹腔鏡の手術時間は短縮されなかった
なんでしょうね、音が大きいと術後感染症が増えるのは術中に歌って飛沫感染しているのか、縫合不全なのか、そこについては言及されていませんでした
要約:
手術中に適度な音量(25dB程度)でモーツァルトを流すことは患者、術者にとっても良い
看護師にとっては音が大きいと術者の声が聞きづらくなる
超要約:
モーツァルトを聞け!!!
明日からモーツァルトを聞きましょう
エビデンスに基づいた治療をすべきですよね???
※著者は大いに意訳しており、誤訳の可能性もあるのでご自身で原文を参照していただくことを推奨します
タグ: 医学